このサファイアたちは、古いですよ。もう、３０年近く前に、タイ辺境の地で、ビルマ人の若い男から購入したルースです。タイの辺境に、宝石市場がございまして、そこにいるのは、ほとんどがスカートのようなロンジーを腰に巻き付けたビルマ人です。このビルマ人たちは、その場所から、あまり遠くには行けません、もし、行こうと思えば、タイ国の許可（書類）が必要になります。つまり、「タイ国が、特別に、そこに滞在させてあげている」という関係なのです。その場所から、タイの大きな町に行くバスの乗っていると、必ず、一人や二人は、無断でタイの内部に行こうとする若者や少数民族に出くわします。彼らは、国境警備員たちに見事に見抜かれ、バスから強制的に降ろされます。その後、どうなるのかは分かりませんが、元の場所に送り返されるか、牢屋に入れられるか、上手にわいろを渡して、次のバスに乗せてもらえるか、そのいずれかであろうと思います。そして、彼らビルマ人も、その地でぶらぶらしているわけにはいきませんので、何らかの仕事をしなければなりません。そのひとつが、宝石業で、祖国のコネを使い、その地に宝石を取り寄せ、そして、様々な国から買い付けに来るバイヤーたちに、宝石を売るのです。もちろん、そのあたりで宝石を売りに来るビルマ人たちは、宝石のオーナーさんではありません。オーナーさんから、宝石をいくつか預かり、それをバイヤーと交渉して売るのです。少しでも高く売れば、それだけ、自分の懐にも、金（かね）が入りますので、彼らも必死です。ビルマ人は、タイ人と異なり、お金にとても細かいですから、バイヤーの方も大変です。値段が折り合えば、バイヤーは、その石をティッシュ紙に包んで、セロハンテープでぐるぐる巻きにし、自分のサインと値段をマジックで書きます。後で、それをとある場所へ持って行くと、お金がもらえるのです。もし、ビルマ人の気が変わって、と申しますか、もっと高く買ってくれそうなバイヤーを見つけ、テープをはがしてしまうと、もはや、先ほどのバイヤーとの契約は、なかったことになります。とある場所に持って行っても、お金はもらえません。バイヤーにも、人気バイヤー・不人気バイヤーがございまして、この当時ですと、やはり、日本人バイヤーがダントツで人気でした。アメリカ人も悪くはないんですが、ヨーロッパ人は、どケチで有名ですし、地元タイ人やインド人、スリランカ人、パキスタン人たちは、買い叩き方が非情を極めていましたので、ビルマ人から、疎んじられていました。この頃は、韓国人や台湾人なら、ちょろっといましたが、本土の中国人や東南アジア人は、めったに見かけませんでした。ほぼ、日本人と欧米人、そして、バンコクのタイ人という感じでした。今は、中国人だらけですけどねえ・・・・・（笑）。 さて、今回の商品は、ビルマ人とバイヤーの駆け引きにおいて、某が、横取りしたものです。つまり、バイヤーとの値段が折り合わず、ビルマ人が商品を引っ込めたのですが、その瞬間に、某が、ビルマ人に、ビルマ語だったか、タイ語だったか、忘れましたが、話しかけて、「じゃあ、俺が、さっき、お前が言ってた値段で買ってあげるよ・・・・・」と言って買い取ったものです。それを横目で見ていたバイヤーが、苦々しい表情を浮かべていたのを覚えております。そりゃ、そうでしょう。バイヤーにしてみれば、ビルマ人が諦めて、折れてくるのを待とうとしていたのですから・・・・・（笑）。なお、この商品は、キャッツアイサファイアではありません。そうではなく、キャッツアイ風のサファイアですから、その点は、お値段からもお分かりかと思います。ただ、珍しい事は珍しいですし、面白い事は面白いです。そんな商品です。二者択一ですので、おひとつお選びください。ライトを当てた写真からもお分かりの通り、不透明ではありません。透明感が、ある程度、感じられる商品です。